責任者挨拶

 新たに医師になる皆さん、当院のHPを御覧頂き有り難うございます。そして、ようこそ医療の世界へ。
 初期臨床研修は、皆さんの長い職業人生の出発点であり、医師として生きる姿勢、進路に大きな影響を与える大切な過程です。少しでも有意義な臨床研修を履修したいと考えておられることと思います。では、有意義な臨床研修とはなんでしょうか?たくさんの机上演習をすることでしょうか?できるだけ多くの診療科をローテートすることでしょうか?それとも、common diseaseを、山のように診療することでしょうか?臨床研修プログラム責任者として、私は常にその問いの答えを考え続けています。
 皆さんの人生や、患者さんたちの病態が、試験問題のように単純であれば楽なものです。臨床研修も学校の授業のようにポイントをかいつまんで教えれば良いでしょう。ですが、試験問題というものは、周到に用意されたフィクションにすぎません。現実世界は試験問題とは違い、何ら周到な用意などされてはおりません。あまつさえ、どこに問題があるのか、それすら知らされません。全ては皆さんが自分の力で探し出し、解決しなければならないのです。早い話が、世界はテストのように単純でも親切でもなく、患者さんの顔には「私は~病です」とは書いていないということです。
 皆さんが大学で教わった知識は、皆さんが考えている以上に高度です。問題が明らかになった後、その解決に必要な知識は、気がつかぬうちに身についています。よって、これから皆さんが最初に身につけるべき能力は、どこに問題があるのかを探し出す能力です。これが昨今叫ばれる、「総合診療能力」です。
 総合診療能力は、いろいろな臓器別の専門科をローテートすれば身につくものではありません。なぜなら、そういった専門科に入院している患者さんは、既に問題点が明らかにされている患者さんがほとんどだからです。また、Common diseaseをたくさん経験すればよいとも言い切れません。なぜなら、どんな医療機関であっても、稀少疾患の患者さんは、ある一定の確率で必ず訪れるからです。その人達は稀少疾患だから誤診されても仕方がないというものではありません。さらに、有名な医師からたくさんの講義を受ければよいというものでもありません。そうであれば、集中的に講義を受けている今こそ、皆さんの臨床能力が最良ということになります。

 本当に総合診療能力を向上させるには、適切なヒントを得ながら、自分の手で工夫して、情報ゼロの状態から患者さんの問題点を究明することです。そして、それを何度となく反復することです。診察室に入ってきた患者さんの顔つき、服装、足取りに始まり、問診、理学所見、初期検査を経て、確定診断のための決め手となる検査を行い、治療する。さらにそれらの全期間を安全に執り行うための初期治療を平行して開始する。この一連の手順を反復することが、優れた臨床医になるための必要条件です。上都賀総合病院は、栃木県西部地域の地域基幹病院であり、このエリアの患者さんであれば、原則的にありとあらゆる病気の患者さんが無差別に来院します。多くの場合、来院時点での前情報はゼロ。選別されることなくやってくるこれらの患者さんが、当院の最大のセールスポイントです。大学病院や大都会の特定機能病院では得難い、野武士のような力強さを手に入れたければ、当院は格好の研修先です。ぜひ、見学にいらしてください。

上都賀総合病院 内科部長
初期臨床研修プログラム責任者
花岡亮輔

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